■2020活動日誌6月■
季節の日々の移ろい、自然の中で感じたこと、後世へ伝えたいことなどを思ったままに綴りました。皆さんのコメントをお寄せください。
2020年6月30日 曇り/小雨 22℃
梅雨と「おくのほそ道」
梅雨の時季になると松尾芭蕉の俳諧紀行「おくのほそ道」を読みたくなる。東北、北陸の名所旧跡を旅した記録であり、1689年3月から9月の行程は150日余り、約600里(2400キロ)にも及んでいる。「五月雨の降り残してや光堂」。今の岩手県平泉で藤原三代の栄華をしのんだ俳句のように、東北を訪れたころは梅雨の真っ最中。この後国境を越え山形県に入っても、土砂降りで足止めされた日があった。誰もが知る有名な一句にも面白いエピソードが残っている。「五月雨をあつめて早し最上川」。梅雨で増水した川の流れは、岸辺から眺めた印象と大違い。舟は木の葉のように揺れ、波しぶきが顔を打ったという。そして急流のすさまじさを表す最上川の名句が誕生した。2020年版国土交通白書によると、最近10年に起きた土砂災害が以前の10年に比べ1・5倍に増えたという。気候変動に伴い大雨が頻発し、洪水や土砂崩れを誘発しているからだ。五月雨の優しい響きと裏腹に、梅雨時に降る雨も油断ならない。新型コロナ感染症と同時に大雨にも注意が必要で、やっかいな季節となってきた。
2020年6月24日 曇り/小雨 23℃
ホタルの生態ー人生の曲がりくねった川のように思える!
長い夕暮れが終わるころ、家の前の田んぼの用水路あたりに、草むらの中から淡い小さな光がすーっと横切っていくのが見えるようになった。ちょっとした水路にも、ホタルが飛ぶようになった。ホタルはおおよそ1年かけて、卵から成虫になる。水の中からはい出し、やっと自由に飛べるようになって2週間ばかりのいのちである。その最期を水しか飲まず、ただ子孫を残すために費やすという。ひときわ光鮮やかなゲンジボタルの生態は陰影に富んでいる。同じ環境に生息していても、育ち方はそれぞれ違う。中には春先になっても陸へ上がれない幼虫もいる。その年、さなぎになることをあきらめ、翌年まで水の中で栄養を蓄える。成虫でいられる2週間のために、もう1年を耐えると言われている。このホタルの生態をみていると、人生は曲がりくねった川のようにも思える。少しばかり回り道をしたホタルもいつか立派に光る。「くらみちのわれの歩みにまつはれる蛍ありわれはいかなる河か」(前登志夫の句)。いろいろな人生を歩んでいるホタルをふと考えてみた。
2020年6月23日 曇り 25℃
お父さんは山にいる!
名著「花の百名山」で知られる作家田中澄江さんは還暦を前にして、新聞に「一緒に山登りをする友を求む」と書いた。これをきっかけに、女性の山歩きの会「高水会」が生まれ、活動は30年ほど続いたという。山好きになったのは、田中さんが小学1年の時に結核で死去した父の影響だった。亡くなる前に2人で散歩中、父は自分が以前頂に立った富士山を指して言った。「お前もいまに登りなさい」。それから「おとうさんは山にいる」の思いを胸に、田中さんは山を歩き続けた。ことわざに「風は吹けども山は動ぜず」という。大風に見舞われてもどっしりとした山容は変わらないように、周囲が騒ぎ立てるような状況でも泰然として信念を貫く人物を表す。田中さんにとって、早くに亡くした父はそんな存在だったのかもしれない。私も最近は登山に、はまっている。山々の季節の花々を味わいながら写真撮影が楽しみとなっている。今週の週末も近場の刈田岳から杉の峰、屏風ヶ岳とお花畑の散策を予定している。今は悠々ファームでブルーベリー摘み取りにいそがしいが、見上げると蔵王連峰がそびえている。「今度はそこへ行くよ」と叫びながら、ますます夏山が好きになってきた。
2020年6月17日 晴れ 30℃
不忘山の高山植物が素敵でした!
山は楽しい。そして心身のリフレッシュには最適である。14日は「やまびこMLC会」の仲間と南蔵王の不忘山へ出かけた。詳細は「小さな旅6」で紹介するが、6月はまさしく高山植物が一斉に咲き始める季節でもある。山の稜線沿いの花々は一層、絵画を引き立ててくれる。登山と言えば、登山家にして発明家、技術者、教育者だった西堀栄三郎さんは、さまざまな分野で優れたリーダーとしても活躍した。第1次南極観測隊の越冬隊長や日本山岳会会長も務めた。組織とは不完全な人間同士の集まりであるが、「共同の目的」を明確にして、人間性を大切にした運営で創造的な仕事ができると考えていたらしい。例えば、南極越冬では1年間自ら便所掃除を買って出てくれた隊員がいた。コックは乏しい材料でごちそうを作ってくれた。補い合う精神が団結を強め、「人に喜ばれること」が、彼らの原動力となった。仲間と語り合いながらお互いに補完しながら頂上を目指す姿がだぶついてみえてきた。すなわち、モラルを守り、仲間通しで一致団結し、各人が役割に全力を尽くすことこそ人間のあるべき山道であることを今回の登山で改めて感じさせられた。
2020年6月11日 晴れ 29℃
不忘山登山を楽しみにしているが。。。
夏山のシーズンがやってきた。外出自粛で縮こまった体と心を大自然の中で解き放ちたいところだが、今年は山にも新型コロナの影がつきまとう。富士山は今夏の閉鎖が決まったようだ。開放的な環境は「3密」と無縁のようにも思えるが、登頂ルートや山頂に登山客が集中するおそれがあるという。そして身近な山でも、他者との距離を空けるなどの対策が求められている。ウイルスへの備えとともに気をつけたいのが、登山中のけがや体調不良には十分気を付けたいと思う。今度の日曜日16日に登山仲間の「やまびこMLC会」と不忘山への登山を計画している。特に今年は長引いた巣ごもり生活で、自分の思っている以上に体がなまってるかもしれない。登山再会ガイドラインで、衰えた筋力や体幹を鍛えるよう求めている。自粛期間中に登山道の荒廃が進んでいる可能性にも触れ、注意喚起している。登り慣れた山であっても、崩れた岩や伸びた木々が行く手を阻むかもしれない。普段なら飛び越え、かき分け進めても、体力が落ちていれば大事故につながりかねない。はやる気持ちはいったん抑え、まずは自分の体から見つめ直したいと思う。
2020年6月4日 晴れ 24℃
医療や多くの人に支えられ、生きていることに感謝したい!
26歳の若さで早世した石川啄木に、入院生活を詠んだ歌がある。〈脉(みゃく)をとる看護婦の手のあたたかき日ありつめたく堅き日もあり〉病気の処置を「手当」とはよく言ったもので、不安や失意の中にいる患者にとって、触れられることは特別な意味を持っているのではないだろうか。医療スタッフはただ冷静に業務をこなしているだけなのに、その手にやさしさや冷淡さを自分本位に読み取ってしまう。啄木のノートには推敲の跡が残ってたらしい。もとの歌は〈いつもいつもつめたき手よと脉をとる看護婦の手を今朝も見つめし〉だったという。いつも「冷たい」と感じていた手を、「温かい」と思える日がくる。病苦にあえぐ歌人の心を揺らしたのは、医療のもつ力だったのだろうか。「何となく自分をえらい人のやうに思ひてゐたりき。子供なりしかな」。啄木は病院のベッドで、うぬぼれていた自身の心ばえの変化を詠んでいる。いくつもの手に支えられた啄木は、人の心のぬくもりが伝わったのだろうか。私自身もガンにより胃摘出後、多くの人に支えられ、今日まで生きていることに感謝したい。
2020年6月3日 晴れ 25℃
カエルの合唱の佳境に入る!
田植えが終わった田んぼからは、夜な夜な何ともにぎやかしいカエルの鳴き声が聞こえてくる。日本人にとってカエルは昔から親しみのある生き物だった。昔話にもよく登場する。まず、ヒキガエルやアマガエルは田の神様の使いと信じているケースもある。殺したり、いたずらしたりすると罰が当たると戒める。次いで多いのは天候占い。カエルが鳴き出すと雨になるという説。水と縁が深いだけに当然かと思うが、地域によっては、逆に翌日は天気になるともいう。さらに冬眠する土の深さで豊凶を占ったり、イボやホクロの治療にカエルの油や皮が効くとする例も目に付く。俗信の真偽はともかく、カエルの大合唱が佳境に入る6月は雨の季節。今週はお天気が良さそうで週間天気はお天気マークが続いているが、10日は雑節の「入梅」。九州南部や四国は一足早く梅雨入り宣言している。そして何より今月は「土砂災害防止月間」。最近は不意の集中豪雨・大雨に見舞われることも多くなってきているので、警戒は怠りなくしたいものである。
2020年6月2日 晴れ 27℃
「ありがとう」・「ご苦労さま」・「おかげさまで」!
「ありがとう」「ご苦労さま」「おかげさまで」。他人の親切や気遣いに感謝の気持ちを伝えるのは、人間として基本的な礼儀である。だからどんな言語にも同じような表現がある。文化人類学者の奥野克巳さんの著書「わたしの外国語漂流記」河出書房新社)によると、マレーシア領のボルネオ島に暮らす狩猟採集民が話すプナンの言語には文字はない。さらに日本語などにある「川」を表す単語もない。なぜなら熱帯ではいつも雨が降り、水の流れは常に変化する。彼らの感覚で「川」と「水」と区別する必要は全くない。同じ理由で「ありがとう」の言葉も日常生活で聞く機会はないという。地域外の人にはマレーシア語「テリマ・カシ(ありがとう)」を使う。しかしプナン人が最も大切にする社会規範は「ケチはダメ」。寛大な心で物を分け与えるのが美徳である。だから仲間内でお礼を言うときは「ジアン・クネップ(いい心がけ)」と褒めるそうだ。6月に入り、新型コロナに伴う外出や移動の制限が緩和されはじめた。ただ第2波再来の危険性は潜んでいる。最前線で働く人たちには感謝を伝え、自分は今まで通り慎重に振る舞っていきたい。「ありがとう」と「いい心がけ」。二つの言葉を生活信条にしていきたいと思うようになってきた。