■■　喝！　天空海闊　■■

自民党の歴史的惨敗という東京都議選の結果を受けて、安倍晋三首相は記者団に「自民党に対する厳しい叱咤と深刻に受け止め深く反省しなければならない」と述べた。その後もさまざまな場で「反省」に言及した。現有57議席から23議席に減らし、過去最低だった38議席を大きく下回った結果は、国政レベルでの安倍政治への「不信任」とも映る。首相自身、「政権が発足して５年近くが経過する。その中で、政権に緩みがあるのではないかという厳しい批判があったと思う」と述べた。しかしその後の行動・措置をみれば、単なる反省のポーズだけで終わっているような気がする。このような対応が続けば、信頼回復は望めないと断言できる。まず、官邸への「忖度」や首相の「ご意向」で便宜が図られたと指摘されている森友・加計学園問題への対応、委員会採決を飛ばす奇策を使った「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の成立過程など、この事態を招いた政権の手法を自ら厳しく総括することが必要ではないかと思う。森友・加計学園などの問題で、東京都民や国民の目に映し出されたのは、政権の「緩み」だけではなく、首相を頂点とする「１強」が常態化したことによる「おごり高ぶり」だったのではないのかと思う。公開を求められた公文書や公的資料の提出を拒む、あるいは存在しないことにする。出すときは読ませたくない部分を黒塗りにしてしまう。加計学園問題では、官僚が作成した文書を官房長官が「怪文書」と切り捨てた。内部調査が始まると、文部科学省の副大臣が国家公務員法の守秘義務違反を持ち出して官僚を威嚇、存在が確認されると今度は名指しされた官房副長官らが記載内容を全面否定した。さらに、それを国会内外で追及する野党やメディアを「印象操作」と非難する。極めつきは稲田朋美防衛相による都議選での自衛隊の政治利用発言だ。一連の言動の背景には、都合の悪いことにはふたをし、逆らう官僚はけなしたり脅したりして黙らせればいい、という傲慢さと強権志向さえうかがえたのではないだろうか。

加えて「魔の２回生」とやゆされる当選２回の自民党衆院議員による数々の不祥事だ。失言、暴言のみならず不倫や交際トラブルなど女性問題、秘書への暴行疑惑。あまりのレベルの低さに、具体的に説明するのも嫌になるような状態が続いている。そして、もろもろの問題の当事者が首相の夫人や側近、安倍チルドレンと呼ばれる若手議員である。都議選の最終日、街頭演説に立った首相は「辞めろ」「帰れ」コールを浴びた。極めて異例の出来事ではあったが、やり返すのではなく、こうした自分に反対する人々の意見を真摯に聞く姿勢、そして多くの意見に耳を傾ける器量をもって、その原因に、しっかりと目を向けるべきではないかと思う。首相は今後、内閣改造や自民党幹部人事で態勢の立て直しを図るつもりでいるが、常々、安倍首相が言うように政治は「結果責任」である。高支持率を背景に強気の姿勢を崩さず、国民の理解を得ぬまま、改憲に突き進めば、さらなるしっぺ返しが待っているのは目に見えている。この国民の怒りを真摯に受け止めてほしい。評価される実績を残せばいいということだけではない。政権を巡るさまざまな問題を、最高責任者としてきちんと引き受け、説明責任を果たすことが先決である。まずは人として「謙虚であれ」！！！